KODAI SHIMIZU  
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WORK SALVAGE BANK

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震災後の仕事を守る防災キットとその救援システム。
このプロジェクトは、Design Academy Eindhovenの大学院時代、授業の一環でおこなったものです。トルコはユーラシアプレートやアナトリアプレートなどによる影響から頻繁に地震が発生する地域ですが、現地の人にあまり防災という意識が根付いていないため、大きな震災の後、日常生活に戻るまでに時間がかかってしまうという問題点がありました。
同じく地震が多く発生する日本から来たデザイナーとして、何かできることがあるのではと2018年にイスタンブールへ行き、現地調査を行いました。

トルコや日本に関係なく、一般的に地震が発生してから以前と同じ生活に戻るまでに、6つの段階があると言われています。第3、4段階目の避難、復旧の際には、食料や生活用品など、被災者が生き延びるための様々な救援物資が届けられますが、その後の街全体の復興の段階になるとどの国でも十分な支援が行き渡っていない現状がありました。

例えば2011年に発生した東日本大震災のときには、震災からある程度時間が経っても漁師の方が沖に出ることができず、仕事や今までのルーティーンがなくなってしまったことがより大きなストレスを与え、心の健康を維持することが困難になってしまったと言われています。
そこで、被災者の命だけではなくメンタルヘルスも守ることにフォーカスした、震災後の仕事を支えるためのシステムをデザインすることにしました。
イスタンブールでは未だに沢山の方が手作業でモノを作る仕事をされていることから、10人以上の職人の方にインタビューをおこない、どんなものが震災後に求められているのかを調査しました。

インタビューの結果、ほとんどの方が生活必需品だけでなく家族の写真や思い出の品など、自分たちの暮らしがそこにあったという証が必要だと考えていることや、震災後でも自らの生きがいである仕事をできるだけ早く始めたいと思っていることが分かりました。

また、イスタンブールのMEF大学で地震のための建築を調査されていたSevince Bayrak氏の講義にも参加しお話を伺ったところ、震災時には建物の崩壊の恐れがあることから、現地の人はみな近くの広場や公園に避難することや、トルコ内に23ヶ所の倉庫を保有しているAFADという団体が、どの地域で地震が発生しても2時間以内に救援物資を運んでくれること、それには貨物コンテナーが使われることなどが分かりました。
これらの調査の結果をもとに、既にあるシステムを利用しWork Salvage Bankとしてリデザインすることを考えました。

このWork Salvage Bankを利用したい人は、震災前にAFADに申し込むことで防災キットを受け取ることができます。その中に各自が震災後に必要だと思うもの、例えば家族写真や思い出の品、仕事に必要な道具などを入れ送り返すことで、震災が訪れるまでAFADがそれらを倉庫内に保管します。

震災が発生した後、保管されていたキットは被災者が避難する公園に届けられ、各自がそれぞれ準備していたキットを受け取ります。キットの中に入れていた道具や思い出の品は、今までの暮らしがそこにあったという証を与え、生きがいであった仕事を再び始めるきっかけを生み出します。

沢山の職人が働いている地域が近くにあるGülhane parkという公園でこのサービスが実現できた場合、何人の方を救うことができるでしょうか。この公園に徒歩13分以内に避難できる半径1km圏内が避難区域だとすれば、その範囲内に20,944人の方が働いているため(2018年時点)、1,232個の防災キットが収納できる40フィートのコンテナーが16個、AFADが所有している倉庫から運ばれれば、その全ての方を救うことが可能になります。

私たちはそれぞれに特別な思い出と生きがいを持って生活しています。いつどこで起こるかわからない地震に必要以上に怯えるのではなく、いつか必ず訪れるその日に向けてきちんと備えができる手助けをすること。また被災者の命だけではなく、今まであった暮らしも守ることを目指しました。

Special Thank You to:
Assist. Prof. Dr. Sevince Bayrak (Faculty of Arts Design and Architecture, MEF University)
Özgür Bulut Gümrükcü (for translating the interview)
Other Students from Faculty of Arts Design and Architecture (giving the information for the mapping)