KODAI SHIMIZU  
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CRAFT-TECHMEN PROJECT

  • / wood, conductive thread
  • / home appliances
  • / product design
  • / social design

工芸のように修理ができる未来の家電とこれからのデザインが担うべき役割についての提案。

このプロジェクトは、デザインアカデミーアイントホーフェンの卒業制作として1年間おこなった研究の成果です。

デザインというものは、戦後の高度経済成長を経験した日本にとって、人々の購買意欲を刺激し経済活動を促進させるためのものであると長い間理解されてきました。より良いものをより早く市場にだすことを目的とした戦略は、価格競争や品質の向上をうみ、日本経済に良い影響を与えてきましたが、大量生産・大量消費が前提となった社会では、同時にある問題も生み出していました。それは、ずっと経済成長をし続けなければならないということです。

ひとたび経済成長がとまってしまうと、それまでのようなモノの作り方は通用しなくなります。 例えば、バブル経済が弾けた1980年代後半からの日本は30年近く不況に陥っていますが、成長が止まっても、戦後の成功体験が忘れられなかった日本企業にとって、生産方法や戦略を変えることは大きなリスクを伴うものでした。どれだけ経営が大変であっても、良いものさえ作っていけば消費者は買ってくれるとの考えから、新商品を必要以上に出し続けることを選んだのです。それにより、デザインは市場とより密接に関わり合い、経済を刺激するものとして使われるようになっていきました。

しかし、経済活動を促進させることがデザインの本質ではありません。デザインとは本来「プランニング」と「スタイリング」の両方をおこなっていくものですが、流行りの表現で商品の見た目を整えて、経済を促進させてきたデザインはいわばスタイリングのみを重視しており、企業がどうなっていくべきなのか、これからの社会をどうしていきたいのかというプランニングの視点が大きく欠如していました。

未来のビジョンをしっかりと描くこと。それを単なる想像で終わらせるのではなく、実行していくこと。それこそがデザインの本質であると考えます。

ずっと経済成長をしていくことは難しい社会。先進国のなかでも一足早く成長が止まりつつある今の日本だからこそ、これからの世界のために提案できるビジョンがあるのではないでしょうか。毎年新しい商品を売っていくのではなく、同じものをずっと大切に使い続けることができる社会の仕組みを考えれば、私たちの経済活動だけではなく、地球の未来もより良いものにしていけるかもしれません。

どんな仕組みがこれからの社会の当たり前になるのだろうと考えた時、思い浮かんだのは昔の日本の姿でした。職人が生活に必要なものを全て作っていた時代では、壊れたものを修理する文化が当たり前のように存在していました。
直せなくなるまでが寿命といわれている工芸から学ぶべきことは、その「循環型の経済(Fig.1)」です。

一方、現代の家電は以前に比べてますます複雑になっているため、一度壊れてしまうと修理の難しさから捨てられてしまうことがほとんどでした。家電メーカーが修理に対する責任をもたない「直線型の経済(Fig.2)」では、サステナビリティとは正反対の位置にありましたが、工芸のように家電を生産・修理する仕組みができればどうでしょうか。
モノを作ったらそれで終わりではなく、最終的に廃棄されるまでずっと修理する責任を持ち続けること。それがものづくりをする全ての企業にとっての義務であり、これからの当たり前のことになっていくべき考え方です。

この考え方をもとに、工芸的家電をつくる新たな職業集団「Craft-techmen」を提案します。
これは、家電のような「Technology」を「Craftsmen」が生産することを意味しており、デザイナー、エンジニア、職人たちで構成された小さなギルドのようなものを想定しています。彼らは大企業のように大量に生産することはできませんが、工芸のように環境負荷が少ない素材で、全ての過程において透明性をもち、健全で素直な循環型の家電を生産・修理することができます。(Fig.3)

このCraft-techmenが実際に作るものと仮定して、この卒業制作では3つの家電(スピーカー、ラジオ、ヘアドライヤー)を試作しました。

これらの家電は、糸を使って部品同士が組み立てされているため、今までよりも容易に分解・修理ができるようになっています。さらにこの糸は通電するものを使用しているため、それ自体が回路の一部となりました。 家電の一部を回転させると、糸同士が徐々に触れ合っていきます。それにより生まれた電圧の変化を家電内部のマイクロチップが読み取り、その値に応じて反応します。この仕組み自体はポテンショメーターと同じなため、マイクロチップのプログラミングを変えるだけで、スピーカーの音量やドライヤーの温度調節、ラジオのチャンネルの切り替えなど、それぞれの家電に合わせた機能をもたせることができます。

このように、もしも家電が修理されることを前提として作られていくならば、工芸品のように長い間使われ続け、次の世代にも受け継いでいくことも可能になります。
一般的にテクノロジー(家電)と工芸は相反するものとして捉えられがちですが、これらが融合し、工芸のように家電を作ることが当たり前になれば、大量生産・大量消費の問題を未来に残すことなく、経済活動と環境負荷のバランスがとれた社会を実現できるかもしれません。

少なくなってきたとはいえ、未だに工芸の文化が脈々と受け継がれている日本。この日本の工芸的価値観は、サステナブルな社会の実現に向けて動き出している世界で、今まさに求められていることではないでしょうか。